恋時雨~恋、ときどき、涙~
異国情緒が漂うミステリアスな切れ長の目元を緩めて、静奈は両手と唇を同時に動かした。


「大丈夫。真央も、すぐに仲良くなれる」


わたしは、空っぽの頭を興奮する犬のしっぽのように、必要以上に激しく振った。


そして、すばしっこい手話で反発した。


〈仲良くなれるわけない。どうせ、バカにされる〉


静奈の形の良い眉が八の字を描いた。


「どうしてそう、マイナス思考なのかなあ」


わたしは、静奈を睨んだ。


〈耳が聴こえる静奈に、わたしの気持ちは、分からない〉


静奈の両手と唇が、同時に動く。


「大丈夫だから。行こうよ、ね」


わたしをなだめるように、静奈はやわらかく微笑んだ。


でも、わたしは頷くことも、首を振ることもしなかった。


ただ、うつ向いた。


静奈の右手が、わたしの顔を扇いだ。




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