恋時雨~恋、ときどき、涙~
「真央?」


静奈の指は、いつだって、うっとりしてしまうほどきれいだ。


いつも、パステルカラーのスカルプチャーをしていて、几帳面に手入れが行き届いている。


余分な肉がついていない、抜群のスタイルをしている指だ。


静奈の指が、わたしは大好きだ。


でも、今ばかりはあまり好きだとは思えない。


静奈が、溜め息を落としたのが分かった。


華奢な肩が少しだけ落ちたからだ。


「分かった。でも、顔、出すくらいならいいでしょ? すぐに帰るから」


そう手話をして、わたしの返事も待たずに、静奈はアクセルを踏み込んだ。


車が一気に加速し始める。


わたしは、重い溜め息を吐き切ってから、整った静奈の横顔を睨んだ。


西陽が眩しくて、静奈の横顔が薄いシルエットになって見える。


わたしたちは、同じ短大に通っている。


今は、夏休みの補講授業の帰りだ。



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