恋時雨~恋、ときどき、涙~
物事には、ちゃんと順番と段階がある、と。


どんなに遠回りしてもいいから、ズルはだめ。


近道ほど、遠回りな道はない。


そう言われた。


だから、わたしは、毎晩、最初から1ページずつ大切に、白雪姫を読むことにした。


結末を知った時、お母さんの言ったことは本当だと思った。


最後のページを先に読まなくてよかった、と本気でそう思った。


だって、白雪姫と王子様が幸せになることを知ってから、森へ捨てられてしまうことや、毒りんごを食べてしまうことを知っても、結末は決まっているからだ。


がっかりする。


小学生ながらも、絶対に近道だけはやめようなんて、生意気な事を思えたのは、まだ幼かったからだ。


幼くて、まだ、心がきれいだったから。


大人になると、どうしても近道を探してしまう。


早く欲しいものを手に入れたい一心で、近道を選ぼうとしてしまうのだ。


その道は近いように見えるのに、実は迂回を重ねた葛折りのような道だと気付かずに。











年が明けて、1月。


年明けそうそうから、大きな問題が浮上した。


果江さんのことだ。


果江さんは、まだ、アメリカには戻っていない。



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