恋時雨~恋、ときどき、涙~
朝なのに、ひどくくたびれた顔で、お母さんはダイニングテーブルの椅子に腰掛けていた。


わたしは、背後からお母さんの背中を叩いた。


お母さんが、弾かれたように振り向いた。


「あ……真央。おはよう」


お母さんの目の下は、くまだらけだった。


わたしは心配になった。


〈おはよう。どうしたの? 疲れた顔してる〉


お母さんはハッとした顔をしたあと、元気よく立ち上がり、エプロンを身にまとった。


「ただの寝不足よ。お父さんの、いびきが、うるさくて」


お母さんの笑顔と手話を見つめて、わたしも笑った。


「真央?」


お母さんが優しい手で、わたしの顔を扇いだ。


わたしは、右手の人差し指を左右に振って、首を傾げた。


〈なに?〉


「今日、出掛けるの?」


わたしは首を振った。


〈予定はないよ。どうして?〉


「だって、冬休みなのに、こんなに早起きするんだもの」


最近のわたしは、ぐうたらだ。


健ちゃんとも、2週間ほど会っていない。


先週の週末も会えずじまいだ。


忙しい。


急に用事ができた。


仕事で残業だ。


だから、最近のわたしは、お昼過ぎに起きる。



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