恋時雨~恋、ときどき、涙~
2週間、健ちゃんは本当に忙しかったのかもしれない。


きれい好きな健ちゃんが、しばらく掃除をしていないと分かった。


リビングの床には、スウェットが無造作に脱ぎ捨てられていた。


ベッドの掛け布団は、熊の寝床のように山盛りの形のままになっている。


キッチンを見ると、空になったビールの缶やコンビニのお弁当が、2、3、空になって転がっていた。


きれい好きとはいえ、結局、男の一人暮らしなんてこんなものか。


わたしはひとつ溜め息を落として、鞄と料理の材料が入ったビニール袋をキッチンに置いて、腕捲りをした。


まずは、部屋の掃除から始めなければ。


わたしはリビングに戻って、分厚いカーテンを一気に開けた。


まぶしい。


世界中の朝陽を凝縮したような冬の陽光が、リビングに射し込んだ。


窓を全開にすると、つめたい、でも、冬の新鮮な空気が勢い良く流れ込んできた。


床に脱ぎ捨てられていたスウェットを拾いあげる。


その時、あまり好きではない香りが、わたしの鼻先をくすぐった。


煙草の吸殻の匂いだ。


灰皿に盛り上がった、吸殻。


灰色の細かい粉が、灰皿の回りに散らばっている。


こんなに山盛りにしたら、危ないのに。


吸殻を片付けようと手を伸ばして、でも、わたしはとっさに手を引っ込めた。


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