恋時雨~恋、ときどき、涙~
静奈に出逢うまで。


健ちゃんに出逢うまで。


幸や中島くんに出逢うまで。


わたしには確かな居場所なんてないと思っていた。


むしろ、居場所があってはいけないとまで。


わたしは頷いた。


頷いて、果江さんを見つめた。


「は? 何?」


何を頷いているの、と首を傾げる果江さんを見つめたあと、わたしはメモ帳にボールペンを走らせた。


【果江さんの気持ちが分かる
 わたしも居場所がないと思ったことがある】


すると、果江さんは少し表情を歪めた。


「そう。あなたも」


歪んだ表情でも、果江さんは美人だった。


果江さんが瞬きをすると、長い睫毛が微かに揺れた。


「あなたにも、幼なじみがいるのよね。亘から聞いてる。あの、車椅子の男の子」


わたしは頷いた。


「なら、分かるはず。いちばん信頼している幼なじみに、ここにお前の居場所はないって言われたら、どんな思いか」


わたしは顔を歪めて、息を止めた。


苦しかった。


もし、順也からそんな事を言われてしまったら。


わたしだって、おかしくなる。


わたしは胸を押さえた。


痛くて、たまらなかった。


< 508 / 1,091 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop