恋時雨~恋、ときどき、涙~
東京へ行って、何もかも忘れて、また一からやり直せばいい。


大好きな彼に、この街に、さよならを告げなきゃ。


雨の季節が来る前に。


雨の季節が来てしまう前に、全てにピリオドを打たなきゃ。


リセットしなきゃ。


今なら、健ちゃんのお母さんの気持ちが分かる気がする。


わたしと一緒に居ると、健ちゃんは幸せになんてなれない。


常にわたしの心配ばかりして、常に気配りをして。


そんな窮屈な人生を、健ちゃんにだけは送らせたくない。


そんなことできない。


大切なひとだから。


一緒に歩んで行ける道は、いくらでもあるのかもしれない。


だけど、それは決して平坦な道ではない。


何かが起きてしまってからでは、遅い。


雨の季節が来てしまう前に。


だって、わたしと健ちゃんに何かがある時は、いつも雨が降るから。


何かが起きる前に、雨の季節が来てしまう前に。


この町を、出て行こう。


それが健ちゃんの幸せのためだと、自分に必死に言い聞かせていた。







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