恋時雨~恋、ときどき、涙~
そうだ。


幸は、おほしさまだ。


わたしは、しっかりと頷いた。


思い返せば、幸は、出逢ったその日から、おほしさまみたいな女の子だった。


暗くて、殺風景な夜道をとぼとぼさまよい歩くわたしを、真上からキラキラの光で照らしてくれるのだ。


ええー、そうかあー、と照れくさそうに身をよじりながらも、


「せやねん! せやったわ! うち、おほしさまやったわ!」


わははは、とおちょぼ口を全開にして笑った幸につられて、わたしも笑ってしまった。


〈ねえ、幸〉


「今度は何やの」


わたしはひとつ深呼吸をして、両手を動かした。


あのね、幸。


わたし、自信なんて、そんなものはないけれど。


〈わたし、まだ、頑張れるかな?〉


「へ?」


きょとん、とした目で幸がわたしを見つめて来る。


熱を含んだ潮風が、頬をかすめて行った。


〈耳が聴こえないし、声の出し方も分からないけれど。それでも、こんなわたしでも、気持ちを伝える事は出来る?〉


まだ、間に合うかな? 、とメッセージカードを見せると、


「さあ。どないやろな」


と、幸はイエスともノーともとれない、微妙なニュアンスの微笑みをこぼした。


「もう、遅いかも分からん。もう、手遅れかもしれん。だって、3年やで。正直、遅すぎにもほどがあるで」


せやけど、と幸の細くてきれいな人差し指がその文字をなぞった。


【よわむしのライオンより】


「この、どあほうに、伝えたい想いがあんねやろ?」


ある。


わたしは、しっかりと頷いた。


幸も頷く。


「せやったら、なりふりかまわんと、伝えなあかん。これは、忠告やないで」


警告でもないな、と次の瞬間、幸はひらめいたように左手のひらを右手のこぶしで、ぽんと弾いた。

< 979 / 1,091 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop