斎宮物語

寝間着に着替え、髪をよく梳いてもらう。

常磐様の言う通り、今日、私に上様のお渡りがある。

上様に会えることがとても嬉しいはずなのに、なんだか最近、モヤモヤする。

長い廊下を歩いていると、ふと月が見えた。

今日は、満月のようだけど、霞んでしまって朧月になっていた。

それはそれで美しいのだけれど。

御小座敷で、上様が来るまで待つ。

なぜか、心臓の音がうるさい。

それも、上様愛しく緊張しているのとは違う。

愛しさ故にドキドキしたいのに、私の心に身体は正直なようね。

毒のこと、万一上様にしゃべってしまってはどうしようと、心臓は激しい鼓動を刻んでいる。


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