斎宮物語

部屋に入り、平伏する。

「面を、上げよ。」

手は畳につけたまま、頭を上げる。

「斎宮、どういうことや?
大奥では、そなたが上様を毒殺しようとしたと、噂されているそうやな。
それは、まことかえ?」

御台様は、前置きもなにもなく、真っ直ぐに聞いてくる。

「はっきりと申し上げます。
私、上様を毒殺しようとなど、微塵も考えておりません。」

御台様には、回りくどい言い訳など無用だと感じた。

「それでは、何故にそのような噂が立ったと?」

「それは…。
わかりません。」

「斎宮殿、まこと、違うと?」

身分の高そうな中年女性に聞かれる。

「はい。」


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