季節越し咲く桜花



「………。」

「…あ!ぇ、えっと……何だっけ?」


反応を示さない俺を、彼女がじっと見つめていた。ハッと気付いて思わず応えるものの、どもってしまった上に話を聞いていなかった為聞き返してしまう。

…何か、さっきから恥ずかしいとこばっか見られてるな。


「…怪我、していませんか?」

「え…あ、だ、だいじょう…っ痛!」


心配しているであろう彼女を安心させるべく、急いで立ち上がる。が、足首が挫いていたようで、痛くて思わずその場に座り込んだ。
膝も擦りむいていていて、血が滲んでいる。


「………。」

「ぁ…ちょ、ちょっと!?」


彼女は無言でその様子を見ていて、顔を上げた俺と目が合った瞬間、いきなり歩きだして公園の外へと消えていった。

「…見捨てられた?」と思ったのも束の間、彼女は白い箱を持ってまた戻ってきた。

俺の前まで来るとしゃがんで、持ってきた箱を自分の足元に置いてフタを開ける。

その箱は救急箱だったようで中から消毒液を取り出すと、突然俺の膝に振り掛ける。


「い゙っ…?!」

「……染みます。」

突然襲いかかる激痛に顔を歪めると、彼女は変わらずの無表情で淡々と告げる。

「…何故後から言う?と言うか、普通そのままかけるか?」という疑問で俺の脳内はいっぱいだ。


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