ブラッディ アリス
「Schneewittchen」
Ⅰ
退屈で退屈で仕方ない世界だった。
窓を開ければ小鳥のさえずり。
午後は優雅なティータイム。
あの木の下で、彼に出逢わなければ…私の時計は退屈なまま、時を刻んでいたのだろう…。
アリスは一人、笑みを浮かべながらパソコンを開く。
「あら?メール…」
メールの主は親友カイルから…。
「…ふふ…またシンデレラを苛めてるのね…」
アリスは楽しそうにメールを読む。
「ラビ!これからカイルが来るわ!起きて!」
アリスはそう言うなり、ベッドに横たわる男の方を向いた。
男は眠たそうに目を擦る。
銀色の腰まである長い髪…血のような薔薇色の瞳。
「おはよう、アリス」
その美貌は、きっとどんな女をも虜にする。
男の名はラビット。
そう名付けたのはアリスだった。
ある日、庭の木の下で…姉と本を読んでいるアリスの前に突然現れたのだ。
その時彼は頭に兎の耳をつけてタキシード姿でこう言った。
「退屈そうだね?」
それからと言うもの、ラビットはアリスの執事として暮らすようになったのだ。
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