ブラッディ アリス
「静かね」
朝はあんなに大勢の人でざわめいていたストレイズ神殿が、寂しげに夕陽に照らされている。
神聖な場所のはずなのに、光より闇の方が似合う気がするのは…何故だろうか。
「服…そのままでいいのか?」
ラビはアリスの胸元を見つめながら、少し心配そうな顔を見せる。
「今さら着替えるのも面倒だわ。行きましょう」
アリスは特に気にもせず、そのまま神殿へ向かった。
朝とは違う門番の司祭が、アリスとラビを確認するなり扉を開ける。
「…司教が客間でお待ちです」
司祭の一人がアリスに微笑みかける。
「ありがとうございますわ」
眉間にしわをよせるラビの横で、アリスは平然と一礼をして神殿の中に入った。
「…わかってたのか?アリスが来ること…」
廊下を歩きながら、ラビは気に食わないというような顔で呟く。
人一人いない神殿の中は、不気味に静まり返っていた。
二人の足音が微かに響き渡る…。
「当たり前でしょう。仮にもこのストレイズ神殿の司教を務める人よ」
アリスは強い眼差しで、遠くに見える客間を見つめた。