ブラッディ アリス
車のドアを開け、ラビは勢いよくエンジンをかける。
今日は普段愛用している赤いオープンカーではなく、真っ黒なワゴン車だ。
そして車のドアの前に立ち、ラビは周りを見渡す。
街から離れた所にひっそりと聳え立つ、広大な敷地のアベル家…。
吹き抜ける風は穏やかで…どこか切ない。
「どうしたの?ラビ」
屋敷から出てきたアリスは、庭を見ながらたそがれているラビに冷めた目で言った。
「…べつに…」
ラビは意味深に鼻で笑う。
「…ふーん…まぁいいわ。…今が11時過ぎね…。コフに行って高速に乗って国境を越えて…晩餐会にはギリギリ間に合うってところかしら…」
アリスは腕時計を見ながら車の反対側にまわり、助手席に乗り込む。
ラビも座席に座ると、ゆっくりと車を発進させた。
「…今回の会議は近くで良かったね。アリス」
「そうね。車で行ける距離だから、気が楽だわ」