ブラッディ アリス
高速を降りたのは午後2時半頃…。
そこから都市アルキオネを通り、タウルス城をおく主要都市アルデバランに向かう。
「農業国で田舎のアリエスと違って…やっぱりこっちはせわしく感じるわね…」
一変した町並みを見つめながら、アリスは小さくため息をつく。
「ここから3時間…くらいか…。隣国の城同士が間近にあるなんて珍しいよな…」
ラビの言葉に、アリスは寂しそうな顔をして微笑む。
「歴史上…最も仲が良い国とされてるからね…。アリエスとタウルスは…」
目的地に近づくほど、アリスの鼓動は速さを増していった。
アベル家当主となって…まだほんの一年半…。
ゾディアックの中では最年少であり、しかも女性であることに対し、認めていない者も数名存在するのは事実。
どんなに名のある貴族出身でも…その人格が保障されるというわけではない。
地位や名誉があるから自由…というわけでは…ない。
アリスは唇をかみ締め、最後にもう一度全ての文書に目を通した。