ブラッディ アリス





「……」


先ほどの…あの匂い…。

…微かにだが、自分の近くから発せられている…。


「…?」


VIPルームに向かうアリスは、不審に思いながら周りをチラチラと見ていた。

だが時に香る強い香水の匂いや酒の匂いで、はっきりとした発臭源が特定できない…。


「…偶然…?それとも…必然かしら…?」


呟くアリスの後ろで、青い顔をしたカルサもチラチラと周りを気にする。


「……挙動不審だぞ?お前ら」

前を歩く二人の様子を眺めていたミカエルは、少しイラついたように言った。



「…いちいちうるさいわね…。あ、あのルームを借りましょうか」

アリスはミカエルを睨んだ後、目についたVIPルームへと走り出す。

そんなアリスを見ながら、カルサは「ふぅ」と小さくため息をついた。


「アリスはすごいよね…。まだ18歳なのに…ゾディアックの中でも堂々としてて…。僕…一応年上なのに…何も言えないし…」

そんなカルサの呟きに、ミカエルは誇らしげな表情で答える。

「まぁ…さっきはめずらしく泣いてたけどな…。あいつは小さい頃から親についてゾディアックの中にいたらしいし…。次期当主として、厳しく躾けられてたみたいだし…」

その言葉を聞いたカルサは、不思議そうな顔をしてミカエルを見る。


「あれ…?でも…ナナリがいるよね?…どうして当主はアリスなの…?」




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