ブラッディ アリス






淡い月明かりが、廊下を照らす。

兎の瞳が、赤い筋を描きながらゆらりと動く。







「ん……あ…っ」

侯爵の寝室から漏れる、娘キオネの声。


「お…お父様…私……聞いて欲しいことがありますの…」

「…なんだ?」

侯爵はキオネの細い腰を舌でなぞりながら聞き返す。

「私…カイル王子が……」

「やはり王子に惚れたか」

侯爵は動きを止め、体を起こしてキオネを見下ろした。

「…あんなに素敵な方…いませんわ…」
キオネは月明かりに照らされた自分の瞳を潤ます。

「…だが…」

「お父様だって、王家との繋がりを持ちたかったのでしょう?…私が王子の愛人になれば…」

「だが…アリスがいる…」
侯爵は眉間にしわをよせてキオネから目を逸らす。

そんな侯爵の言動に、キオネは嬉しそうな顔をして起き上がった。

「アリスは私が始末いたしますわ。あの方に頼めば…きっとうまくいきます。それに王子も私に気があるみたいですのよ。先ほどアリスの前で、私を抱きしめてくださいましたの…」

キオネはそう言いながら、侯爵にそっと触れる。
自分の体をつたう娘の指に息を荒くしながら、侯爵はゆっくりとキオネの体をベッドに寝かせた。





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