ブラッディ アリス
毎晩毎晩、カイルの妻シンデレラは死にきれない屍のよう。
「狂ってるわ」
アリスは地面の草をプチプチとむしりながら、冷ややかな視線をカイルに送る。
カイルはまたニヤリと笑うとアリスに近づき横に座った。
「君には負けるけどね」
「…ふん…」
穏やかな時が過ぎる…。
見えない風が雲を押し流す。
ざわめく木々や草花たち。
退屈…退屈…退屈…。
まだ誰も気づかない残酷な物語は、もう始まっているというのに。
「…何か…ないかしら…。退屈よ」
アリスが空を見上げながら呟く。
そんなアリスを見たカイルは思い出したように立ち上がった。
「そうえば…新聞見た?明日は隣町の大富豪…ベルアベスタ家のシャルル夫人が公開処刑だって…」
「なんですって?!」
その言葉を聞いたアリスは勢いよく立ち上がる。
「どうやら…執事との不倫がバレちゃったらしいよ…。まぁ噂によると、ご主人も愛人がいるらしいけどね。たぶんそれに耐え兼ねて不倫しちゃったんじゃない?」
アリスの瞳は爛々とし始め、口元が微かに笑みを浮かばせていた。