ブラッディ アリス






「…7時…か…」


満月の下、サジタリウス国…ラピスラズリ邸の中庭で、銀色の長い髪が夜風に靡く…。



「…オフィユクス…」

薔薇色の瞳に映る…金色の懐中時計…。



「行ってはいけませんわ。ラビット」

「…ルナリア様…!」



ラビの目の前に現れたのは、月の色にも似た金色の髪を持つ…マリア家当主、ルナリア・マリア…。


「……なぜですか?…アリス様の御身が心配ではないのですか…?」

パタンッと懐中時計を閉じ、ポケットにしまうラビ…。


「心配ですわ。…でも大丈夫…。リリス家は、アリスには手を出しません…」

ルナリアはにっこりと微笑み、ラビとの距離を縮めていく。


「…何を根拠に…っ!…あの国は…あのドクター・ラマツの母国ですよ?!」

ラビは眉間にしわを寄せて、険しい顔でルナリアを睨んだ。


「モレク・ラマツのような者は、少数派です。現リリス家当主…コキアは、無駄な殺傷を好みませんわ…。それに…アベル家当主であるアリスに手を出せば、貴族界との戦争になるのはわかっているはず…」

ルナリアは穏やかな表情で、優しくラビの頬に触れる…。




「…アリスのことを…大切に想っていてくれてるのね…。ありがとう…」










< 573 / 657 >

この作品をシェア

pagetop