ブラッディ アリス
ラビはルナリアから目を逸らし、パッと手を払い除けた。
「…我が当主です…。当たり前だ。……あんな危険な場所へ…なぜ一人で…」
「それは、あなたが行くと…殺されてしまうから…。あの国は、余計な侵入者を嫌うわ。…アリスは良くてもね……あなたは良くないの。…それをアリスは知っていたのよ」
ルナリアの澄み切った声が、ラビの耳に心地よく入っていく。
「少し、あなたとお話がしたいの。あそこに座らない?」
ふわりと風に舞うルナリアのストール…。
「………」
ラビは何かに導かれるように、テラスに用意されたソファーへと歩き出す。
「…初めてね…。…ラビ……あなたとこうやって、ゆっくり話すのは…」
「……そうですね…」
二人は向かい合ってソファーに座り、しばらく見つめ合った。