ブラッディ アリス
ルナリアは静かに、ラビに懐中時計を返す。
ラビは懐中時計を受け取ると…フッと鼻で笑い、足を組んだ。
「…今も、リナリア様と会話できるのではないのですか?…聞いてみればよろしいのでは…?」
「…聞こえる声と…聞こえない言葉がある…。それに……死者は…あまり過去を覚えているものでは無いわ…」
「…へぇ……そうですか…」
明らかに、先ほどまでのルナリアとは様子が違う…。
ラビは懐中時計をパカパカと開けたり閉じたりしながら、不適な笑みでルナリアを見た。
「…大切にしてね…。…リナリアの形見…ってことになるでしょう?」
どこか寂しげに俯いたまま、ルナリアは呟く。
「……わかってますよ…。いずれは…アリス様にお渡しするつもりですから…」
ラビはそう言うと、ゆっくりと立ち上がり、ルナリアに対し一礼をした。
「……今宵も良き夢を…。…マリア公爵…」
「……"ラビット"……」