ブラッディ アリス
「…さっき持っていたの…懐中時計でしょう…?…見せてもらえないかしら…?」
「…ええ……かまいませんよ…」
ラビはポケットから金色の懐中時計を取り出すと、ルナリアにゆっくりと手渡した。
「……素敵な時計ね…。……アリスに買ってもらったの…?」
「…いいえ。…それは……リナリア様から…いただいた物です…」
「…?!…」
ラビの放った言葉に、ルナリアの顔から笑みが消える。
「……い…つ…?」
「…お亡くなりになられる前に、一度お会いしたことがあります。…養成施設のホームページをご覧になられたと言って…私はアベル邸に招かれました…。……そのときに…」
「…なんと言って……リナリアはあなたに…これを…?」
「……『必ず、我がアベル家当主の専属執事に依頼する。その証として』…と、おっしゃっていましたが?」
「…そんな…」
ルナリアは懐中時計を見つめながら、じっと何かを考え始めた。
「…どうかなさいましたか?…ルナリア様…」
どこかわざとらしく聞こえるラビの言葉…。
「……いや…。……びっくりしたの…。『依頼状』は郵送されたと聞いていたから…会ったことがあるなんて…」