ブラッディ アリス



兎のいなくなった中庭…。

一人…テラスのソファーに座りながら、満月を見つめるルナリア…。

優しい夜風が、髪を撫でるようにふわりと通り過ぎる。



「今の…聞こえてたかしら…?……フヴァルナ…」

ルナリアの口から言葉が発せられた瞬間、柱の影から…マリア家専属執事フヴァルナが姿を現した。

「はい。…長老会に、報告いたしますか?」

「…そうね…。早急に…」

ルナリアは立ち上がり、険しい表情で庭の花々を見渡す。

「……アリスとラビットに…監視をつけるように伝えて。…二人を見張っていれば…きっとわかるはずよ…」

「…かしこまりました…」

フヴァルナは一礼をすると、足早に室内へと入っていった。





「リナ……あなたの言ってたこと…すべてが真実ではないかもしれない…」




ルナリアは悲しそうに呟いて、再び満月の空を見上げた。






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