ブラッディ アリス



兎を追って堕ちていく…深い真っ暗闇の穴の中…。

そう、彼がアベル家にやってきたのは…新しい年が明けてすぐの1月13日だった。


その次の日に狂った姉のナナリの症状については、伯母の姉ルナリアが『解離性同一性障害=二重人格障害』と診断。

「…このことは…他言無用よ…アリス!…これからは、ナナリをあまり外出させないこと」

ルナリアは厳しい表情を浮かべ、ナナリのことを極秘とした。



「…ごくろうさま。…これでアベル家のことを理解していただけたと思うわ」

それから一ヶ月後、ラビはアリスに指示されたとおり、屋敷内の文書や本すべてを読み終えた…。

「……本当に私が知ってしまっても良いことか…、悩むような内容のものもありましたけどね」

疲れた様子でソファーに深く腰掛け、ふぅと一息ついたラビ。

「ふふふ…。読解力はバッチリのようね。…この一ヶ月あなたを見ていたけれど…悪くないわ。これからが楽しみよ」

アリスは嬉しそうにソファーの後ろへと回りこみ、ラビの顔を覗き込む。

「……腕……治りましたね。傷跡が残らなくて良かった…」

自分の目の前にあるアリスの二の腕を、ラビは安心したように眺めた。

「………」

ラビの真紅の瞳を、アリスはじっと見つめる。

「…いかがなさいました?」

「……べつに…」

「心配なさらなくても、抱きますよ。今夜」

ニヤリと微笑んだラビの一言に対し、思わず目を逸らすアリス…。


「…あ……あれは…」


「あなたは『抱いて』と間違いなくおっしゃいました。…もともと私はあなたを抱くつもりでしたし、合意の上ということ…ですよね?」








< 627 / 657 >

この作品をシェア

pagetop