ブラッディ アリス
『執事』という立場を本当に理解しているのか…。
これから貴族界…社交界を共にして、大丈夫なのだろうか…。
ラビの言葉には時々、不安を感じることもあった。
「……そ…そうね…。…わかったわ…」
なんとなく…ラビに優位に立たれている気がする…。
アリスはそう思ってしまう自分を抑えて、強引にラビの唇へ自分の唇を重ね合わせた。
「…早めに夕食をとりましょう…。…夜は長い方が良い…」
ラビはクスクスと笑うと、アリスの頭を軽く撫でる。
「可愛いですね…アリス様。…本当に愛しく想います」
「……ふん…。……いいから早く…食事を作りなさいよ…」
信じることなんてできない人。
私以上に常識外れなことを言う…。
絶対に、心を許してはいけないの。
でも…この一ヶ月…時折彼が優しい笑顔を見せた…。
自分のことを「愛してる」と言って、微笑む彼がもしかしたら真実なのではないかと思った…。
そのたびに、『演じる』ことを忘れてしまいそうで…。
この…不思議な気持ちは…何……?