ブラッディ アリス
「お待たせいたしました」
直後、芳しい匂いを放つ朝食が、二人の目の前に並べられていった。
「……ホント…気配感じないねー…」
カイルは丁寧に皿を置くラビを見上げ、じっと睨みつけた。
「…執事とは本来…存在を空気と同化させたように生きるものだ…と、習いましたから」
ラビは余裕の笑みをカイルに見せる。
「…あっ…そう……。毒とか入ってないよね?これ」
カイルは鮮やかな彩り野菜がのったオムライスを指差す。
「ご心配なら…アリス様より先にお召し上がりになられてください」
「………は?…」
ラビは再びカイルに笑みを見せ、キッチンへと戻って行った。
「…あいつ……王族をなめてる…」
「……すっごく美味しいわよ?…きっとカイルの機嫌も直るわ…」
アリスは二人のやりとりに構わず、すでに食事に手をつけていた。
「……えー…?…」
嫌々といえど空腹だったカイルは、大きな一口を頬張る。
「………っ!!……う…」
「ね?そっちのシェフより美味しいでしょ?」
「……う…うん…」
本当に美味しそうに食べるカイルの姿を見て、アリスはにっこりと笑った。
「…まぁ……勝手に決められたとは言え…結婚したって自由にやればいいじゃない?」
「………」
「いつかは結婚する……。…それは…私も同じだから…」