ホンモノノキミ



いやっ、気付いたといっても別にあたし、あの人と一回も関係持った事ないし


あと好きでもないからっ、うん、大丈夫っ


あの人とあたしは『あかの他人』


という訳で、目を合わさないようにコンビニに入ろうっ




妙に堂々とした歩き方で、板倉先輩の横を通り過ぎようとした瞬間。




ぐいっ




「いっ…」


「ちょっと、いい?鈴野 実帆ちゃん」




実帆の腕を捕まえ、ニッコリ笑う海に冷や汗が流れる。




アイドル…?


これアイドルですか…?


何かキャラ的に言うとチャラいんですけど…




呆気に取られていると、海先輩はじーっとあたしの顔を見ていた。




「あんたが、『実帆先輩』ねぇ…」


「…?」


「まぁいいや。そう言えば、あんた俺のこと好きにならなかったみたいじゃん」


「……っ?!」




海先輩にも伝わってたんだ…




「滅多にあんたみたいな奴いないよ。どう、俺と付き合ってみない?」




ニコニコ笑いながらじりじりと顔を近づけてくる、この人が嫌だ。


この笑った作りものの顔が嫌だ。


怖い。


作りものの笑い顔ほど怖いものはない。



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