トラックで輝く君を
そこにいたのは、
幼なじみのお兄ちゃんだった。





「航兄、久しぶりだね。」





航兄こと、花田航太は私の4つ年上なんだ。

今は地元の大学の教育学部に通っているんだとか。





「蜜菜はあんま見ないうちに綺麗になったな。
お兄ちゃん心配だなぁ…。」



「航兄なに言ってるの?
私は全然変わってないのに。」



「いやいや、綺麗な女性になっちゃって…。」



「私のこと口説いてんの?」



「まさか!そんなことしたら、生きていられね-って!」



「クスクス。だろうね。」





航兄とは、ずっと長いこと会っていなかった。
高校生の航兄は忙しかったのもあるけど…私が避けたから。



会っても、笑う自信がなかった。



だから、今こうして笑って話せる自分に驚くと同時に悲しくもなった。





「蜜菜がちゃんと笑ってくれてよかったよ。
正直、声かけるか迷ったし。」



「…笑ってる自分に驚き。」



「俺はそれでいいんだと思う。
蜜菜がこれからどうしたって、お前自身のことなんだから。過去にいつまでも縛られんな。」



「…うん。」





それっきり、私と航兄は口をきかなかった。

気まずい、とかじゃなくて。
別に話す必要はなかっただけ。





航兄は家まで送ってくれて、お礼を言って別れた。





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