【完全版】HIDE&SEEK-心と心のかくれんぼ-
侵入し、なまめかしい動きをするそれが、舌だと気付くのにあまり時間はかからなかった。



キ モ チ ワ ル イ…。



大好きな人とのキスを初めてそう思った。



悔しさと悲しみが込み上げる。



私は勇将先輩の唇を八重歯で噛んだ。



「…っ!」



勇将先輩が私の体から離れる。



形の良い薄い唇から、血がツーッと伝った。



「…あの女の人には優しくするのに、私には優しくないんすね。」



私は低い声で勇将先輩に言い放った。



無表情で固まったままの勇将先輩を残して屋上から逃げ出してしまった。
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