キューピットは求人誌!?


「母さんのデザインは繊細で、落ち着いたものが多かった。
けれど、今の父さんは母さんのデザインを嫌うように、逆のものを書いている」


そこで一旦言葉を切った彼は渇いた笑い声を上げる。
嘲笑の笑いを。


「馬鹿だよな、母さんの死に捕らわれて今までの自分を見失うなんて。
…俺父さんに言ったんだよ。
母さんの望みは父さんに服を沢山デザインしてもらう事じゃないってな。
そしたら、何て言ったと思う?」


本当の笑みではなく偽物の、無理して作った笑みを顔面に貼り付けて彼が問う。


私は無言のまま首を横に振った。


「母さんが居なくなった分、俺が働かないとロゴスに影響がでるだろう…ってさ。
父さんが狂ったようにデザインを描いていたのは、母さんが死んで傷付いているからでなくて、仕事の為だったんだ。
信じられない」


最後の言葉は噛み締めるように、強く、太く放たれた。


彼が父への怒りや侮蔑を忘れないと胸に刻むように。


< 32 / 32 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

今日から執事
壱縷/著

総文字数/58,798

恋愛(その他)121ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
父親が勝手に決めてきたバイトは、執事!? 有無を言わさず強制送還された場所は 山奥にひっそりと佇む 豪邸だった。 高校生の桐谷真斗が体験する一夏の恋物語 ♪ ♪ ♪ ドタバタ人情ラブコメディー。 というのは嘘です。 ただの恋愛物語です。 少しシリアス路線入ってます。
戸惑いプリンセス
壱縷/著

総文字数/15,494

恋愛(その他)42ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
桜が街を淡く彩る春 高ぶる鼓動 好きな人を追いかけて入学した学校で出会った 様々な人たち 全てが輝いて見えて 幸せな日々が心を満たす 「私が心から隣に居たいって思える人は誰なんだろう?」 好きな人を追いかけていたはずなのに 次第に揺れる想い たどり着いた 答えの中に居るのは 誰か? ♯ ♯ ♯ いたって普通の ラブストーリーです 宜しければどうぞ! ↓ ↓ ↓
皮肉と剣と、そして俺
壱縷/著

総文字数/8,237

恋愛(その他)22ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「貴様、どこの刺客だ」 目の前には剣をもった女 サファイアのような 瞳を持つ軍人の女。 ーー奇妙な出逢い それは時に唐突にやって来るのだ。 「ほう。ならば貴様を拷問にかけるチャンスといった所か」 「…物騒な事言わないでくれない?」 顔を突き合わせれば皮肉 言葉を交わせば さらに皮肉。 サファイアの瞳を持つ女 エイダ=ヴァネッサ 何故だか 異世界に来てしまった男 久瀬ナオト 物語が今、綴られる… ☆ ★ ☆ 異世界トリップものです。 短編ですが、続編も予定しています! 宜しければどうぞ↓

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop