恋の相手は俺様王子!?

チラリと奴の顔を下から覗き込むと、本に顔は向けたままだけど、その目線は一点を見つめたまま固まっている。


「お、おーい?」


呼び掛けると、バッとあたしから体を放し口をパクパクさせていた。


金魚みたい……。


「あれはっその……。 忘れろ! つい癖でっ」


こんなに慌てた姿初めて見た。

「忘れろって、なにを?」

「………」


あ、黙った。

だけど顔は引き吊ったまま、あたしから目線を避ける。


ちょっと面白いと思ってしまう、いけないあたし。


多分忘れろって、さっきの寂しい何チャラで頭ポンポンってやつだろうけど、忘れられるはずがない。


なんて言ったって、この無愛想な男がやったことだからだ。


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