恋の相手は俺様王子!?
怒らせてしまった。
仕事に誇りを持っていた彼に、言ってはいけなかった。
「お前は、良い雇い主だよ。 俺や陸のことを気にしてくれたことには感謝する。
だが、やっぱり規律を乱すのはよくなかったな……」
ドアノブを握り、ゆっくり振り返った彼の表情は悲しげだった。
それに、どんな意味が込められているんだろう。
「悪いが、仕事おろさせてもらう」
「なっ! なにそれ? 無責任じゃないの? あんたは、あたしを一人前にするって言ったじゃんっ」
本当は、こんなことが言いたいわけじゃないのに。
なのに、伝えたい言葉が出てこない。
「悪い。珍しく自信がもてねぇ」
「自信ってなに? あたしは、あんたがいいだもんっ」
「他にも良い奴はいる。 それじゃあ」
「意味わかんない! 待ってっ、待ってってばぁぁっ!」
――――ガチャン……
重いドアの閉まる音。
あたしの制止の言葉は、届いてくれなかった。
.