オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
「結局犯人はわからずじまい。
これはわしを不憫に思ったのか、優しい刑事さんが直々に返しに来てくれての。
それ以来、ペットは飼わんくなった。近所にいないのもそういう訳じゃよ」

そうだったんだ。

あたしはやっと納得できた。
どんなにペットブームでも、ここの人たちが決して飼わないのは、そんな悲しい背景があったから。

タロウくんが命を賭けて残した注射器。

たとえ犬だろうと、静江おばあちゃんには子どもにも等しい家族だったんだ。

今も、涙が止まらない静江おばあちゃんの姿を見て、あたしは悲しいと同時に犯人に対する怒りが沸いてきた。

そういえば、今起きてるペット変死事件と似てる?

あたしがそう気付いた時、泣きながら博君が静江おばあちゃんのほっぺたに手をやって、撫でていた。

「おばあちゃん、かわいそう。オレ、タロウの代わり出来ないけど、おばあちゃんのそばにいるよ」

そう言った博君を静江おばあちゃんは抱きしめて、ありがとうって泣いてた。


おばあちゃん、あたしもいるよ。


あたしは心の中でそっと呟いた。
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