オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
 別に、いいけどね。あたしはマリリンやユリみたいに可愛くもないし、カレが欲しいわけじゃないから。


でも、ホントは。


夢の中のあの男性(ひと)。


ここにいる一高の男子と違って黒い髪だったから、ほんのちょっとだけ寂しい気もした。


 楽しそうにお喋りしてるみんなを横目に見ながら、あたしはストローを咥えたまんま、ガラス張りの向こうに目をやった。


 学校や会社が終わる時間帯だから、会社帰りの会社員や学生のグループが多かった。


このショッピングモールの屋上には映画館や小さなアトラクションもあって、休日には家族連れやカップルでも賑わう。


家族……か。


昔を思い出しながら人の流れをぼんやりと眺めていると、ふと気になることがあった。


ときどき通り過ぎる人の足元の影が、ゆらゆらと揺れているような気がしたから。


ほら、今もまた。


気のせい……だよね?


気温の高い昼間に出る陽炎じゃあるまいし、今みたいな秋の夕暮れ時に人の影が水の中に映しこんだみたいに揺らめくなんて、あり得ない。
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