オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
いつも通りにカウンターからの裏口を使って外に出た。
裏口は屈んで潜り込むように通らねばならない位に小さいし、目の前にはちょっとした生け垣もあって人目につかず出入りするにはちょうどいい。
だが俺は、裏口を出る前から表に人の気配を感じていた。
産土本家の奴らがまた来たとなると、今回は相当にしつこい。
いつもなら1日で帰るものだが……。
家に引っ込むとは言っても、外に出なければ食糧が確保できない。
今日の分の食料さえない有様で、朝食など抜いていたから。
こうなれば実力突破しかないか……
俺は音も立てないよう気を配りながら裏口を抜け、生け垣の蔭から相手を見定めようと背を低めながら前進して。
まだ雪が降り積もるなか、立っていた予想外の人物に驚きを隠せなかった。
雪の中にいたのは――
もうこの町に居ないはずの
渚杏子だった。
いつから待っていたのか、毛の上着や頭は雪で濡れたらしくぐっしょりと水分を含んで重そうで、肩や頭には次々と降る雪が積もっていた。