オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
じいちゃんとナギと婚約と
1
「ぐごあ゛う゛ぉあおおう゛う゛う゛あう゛おあ~~~ッッッ!!」
その轟音……
もとい。
猛獣の吼え声……
もとい。
産土探偵事務所の壁が揺れるかと思うくらいの怪音の正体は。
ソファーに座ったあたしの向かい側で、テーブルに突っ伏しながら慟哭している女性の泣き声だった。
その女性はほんの10分ほど前に探偵事務所を訪れてきたのだけれど。
あたしが裏口のドアを開けるなり、その人は猛牛のごとく勢いよく突進して。
真っ先にテーブルにかじりつき、顔を伏せて泣き始めたのだけれど。
もうこうして10分もガード下の轟音よりひどい叫び声を聴き続けたあたしは、今にも意識がどこかへ飛んでいきそうになって。
いけない、いけない!
今はナギがいないんだから、あたしがしっかりしなきゃ!!
両手で頬を思いっきり叩いて気合いを入れ、あたしはしっかりと目の前の女性を見てみた。
見たところ30代後半から40歳くらいに見えたけど、この季節には寒そうな薄紫色のキャミソールを着てる。