オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
「とても暖かで……そして寂しいものでした。
いつからか、気付いてしまったのです。
忠司様のお心には誰かいらっしゃるのだと。
私は忠司様の情熱をお慕いしながらも、その事で度々言い知れない感情が胸を焼きました。
あの時は怖くて訊くことが出来ませんでしたが、今は後悔しています。
忠司様は私をどう想ってくださったのか、そして、見ていたのは何なのか。
そして……
ただ一度なりとも、自分の本当の気持ちをお伝えしておけばよかったと。
なにも確かな言葉も形あるものもなく、思い出だけをよすがとして過ごして参りましたが。
この頃は頼りない心地になる事が多く、いつまで自分を保てるのかわかりません。
杏子さん。
年寄りの余計な繰り言ですが、どうかお聞きくださいませ。
貴女はまだお若い。
ですけれど、年月と言うのは誰にでも同じだけ経つものです。
愛しい人と別れれば、私のように後悔ばかりのつまらない人生を送ることになりかねません。
どうか短気にならず、相手の本当の気持ちをお確かめなさい」