オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
潮が満ちてきたのか、冷たさが肌を通り感覚を麻痺させる。
……連れていってくれ。
体が永遠に揚がらぬように、深い深い海の底へ。
俺はそう願った。
……その音が響いてきたのは、どれくらい経った頃だったか。
小鳥のさえずりが数度聴こえ、続いて子猫の鳴き声、ドアの軋みに似た低い音、ガラスを擦り合わせたような音。
それらが次々と聴こえてきた。
幻聴かもしれなかった。
雑音にも聴こえたその音は一定のリズムを持っていて、まるで音楽のように強弱や長短があったからだ。
そう……
まるで唄うように。
その韻は俺の白濁とした意識に入り込み、微かに残っていた思考を繋ぎ合わせ始めた。
その一方で、信じられない事が起きた。
誰が手を尽くしてもどうにもできなかった俺の体に力が蘇り始めていたのが、その歌を聴いた直後からだったのだ。
止まりかけた心臓も呼吸も、以前より力強く動きはじめた。