オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
だが、俺は耐えねばならない。
死という穢れから、あいつを遠ざけねばならないからだ。
あいつはいつか俺を忘れ、幸せに暮らせばいい。
だから、俺はあいつに3億の遺産を遺した。
20歳の春に受け取るよう、代理人の弁護士に委託してある。
あいつはそれまで自力で頑張れるだろう。
たくましいヤツだから、俺がいなくとも大丈夫なはずだ。
そう考えているうちに、体に力が入らなくなっているのに気づいた。
脂汗は出るのに体がどんどん冷えて、呼吸も浅くなってきた。
……とうとう来たか。
後ろの岩に体を凭れかけ目を瞑れば、過去の記憶が甦った。
寂しかった幼い頃、マモルとの出逢い、アプレクターとの戦い、様々な人生、喜び、悲しみ、怒り。
短いなりにそれなりに充実した人生だといえた。
だが……。
よりいっそう鮮やかに思い出せたのは、杏子との思い出だった。
6歳で出逢い、10年後に再会するまで。
俺は
ずっとあいつが――。