オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】



だが、俺は耐えねばならない。




死という穢れから、あいつを遠ざけねばならないからだ。


あいつはいつか俺を忘れ、幸せに暮らせばいい。


だから、俺はあいつに3億の遺産を遺した。


20歳の春に受け取るよう、代理人の弁護士に委託してある。


あいつはそれまで自力で頑張れるだろう。


たくましいヤツだから、俺がいなくとも大丈夫なはずだ。


そう考えているうちに、体に力が入らなくなっているのに気づいた。


脂汗は出るのに体がどんどん冷えて、呼吸も浅くなってきた。


……とうとう来たか。


後ろの岩に体を凭れかけ目を瞑れば、過去の記憶が甦った。


寂しかった幼い頃、マモルとの出逢い、アプレクターとの戦い、様々な人生、喜び、悲しみ、怒り。


短いなりにそれなりに充実した人生だといえた。



だが……。



よりいっそう鮮やかに思い出せたのは、杏子との思い出だった。



6歳で出逢い、10年後に再会するまで。


俺は


ずっとあいつが――。



< 865 / 1,000 >

この作品をシェア

pagetop