オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
杏子を近くの小屋に運び込んでおいた。
付近の住民から特別に借りておいたのだが、まさか使う羽目になるとは思わなかった。
ザトウクジラの力か、衰弱はかなり回復しているように見えた。
だが、やはり半月歩き通しの疲労は相当だったのか、丸一日眠っていた。
満月の淡い光に照らされた杏子の顔は、時々苦悶に満ちた表情をする。
そんな時、決まって俺の名前を口にした。
それは悪態や悪口などではなく、いつも心配する声で。
……バカか、コイツは。
俺はどうしようもなく居たたまれなくて額に手をやり、前髪をかき上げた。
……どうしてこいつは。
俺にここまで出来る!?
自分の命すら惜しみなく分け与えて。
寝言でまで俺を心配して……
こんなボロボロな姿になるまでさまよい歩いて、疲れ果て衰弱するまでに。
俺は何をすればいい?
おまえになにを返してやれる?
そう考えた時、たったひとつだけ返せるものがあるのに気付いた。