ひとり恋♥マイセルフパラダイス(オリジナル版)
「あっ!」
間違いなく、ソレはかつて“メガネ”と呼ばれていた物体だった。
だけど、今はもうグチャグチャにねじれて折れ曲がったヘンな形の鉄クズでしかない。
「母さん、このメガネを見たとき、ゾッとしたわ。よく生きてたと思うもの」
「ちゃんと信号を見て道路を渡らんから、一歩間違えたら、お前がこのメガネみたいにグチャグチャになってたところだぞ」
「・・・・・・」
たしかに父の言うとおりだと思う。
「なんで雨の中、ズブ濡れになって歩いてたのよ。電話くれたら、母さん、学校まで迎えに行ったのに」
「・・・・・・」
言えるわけない。
・・・ってゆーか、うまく言葉で説明できない。
いや、たとえ説明できたとしても、親なんかに説明する気はないし、分かってもらえるとも到底思えない。
「なんか、あたし、まだキツイかも・・・もう少し寝たいかな・・・」
「千賀子ちゃん、ゆっくりお休み。お父さんたちには診察室のほうで、今後の治療のことについて、ご説明させていただきます」