cherry blossom Ⅰ
思ってもみなかった先生からの電話に
困惑してしまい言葉が出てこなかった。


「あのさ俺、手帳忘れちゃって。
それないとかなりヤバイんだよね。
時間あったら持ってきてほしいんだけど
…大丈夫かな?」


ここでNOなんて言うはずがない。
本当は毎週楽しみにしていた
ドラマを見る予定だったけど
今となってはそんなのどうだっていい。


ドラマの中の2人が
付き合おうと、別れようと
私には全く関係がないし
今は自分の恋で精一杯だ。


「それじゃ…8時に駅前の喫茶店で。」


約束の時間を決め受話器を置く。

家庭教師をしている時以外で会うのは
今までなかったから
先生の新しい一面が見られる気がして
気分は変に高ぶっていた。
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