それでも、すき。


結局、放課後まで香椎くんは学校に来なかった。

顔を合わせなくて済み安堵したのと同時に、あの後どうしたんだろうか、と気になる。



いつの間にか、外はどしゃ降りの雨。

何時から降ってたのかは定かじゃないけれど、グラウンドに作られた水溜まりが雨の強さを示していて。

窓を叩く雨音を聞きながら、浮かび上がる雑念を振り払った。



…居る訳、ない。

だって外は雨だし、あれから8時間以上経ってる。

さすがに諦めて帰ってるよ。




言い聞かせるように歩き、昇降口を出ると、雨音が一気に近くなった。

一歩足を踏み出せば、傘を差す意味すらわからなくなる。


でもこんな雨の中、傘を差さずに歩いていたら白い目で見られるだろう。

別にそれでも構わないけど。



そう思いつつ、傘を広げるあたしは矛盾だらけだ。


会わなくてホッとしたくせに、彼が今どうしてるか気になるなんて。

忘れる、って決めたのに。




…あぁ。
バカだな、あたし。




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