それでも、すき。


これほどまでに、電車が遅いと思ったことはあっただろうか。

まるで全てがスローモーションで流れてゆくみたいだ。



「柚果!」

学校のある駅に着くと、あたしは真っ先に走り出す。

呼び止める菜未ちゃんの声も聞こえないくらいに。



早く、早く。

一度も足を止めることなく、通学路を駆け抜けてゆく。


学校に着くと、あたしは迷うことなく自分の教室を目指した。


バタン!と扉が壊れてしまうんじゃないか、という程の勢いで教室に飛び込んだあたしをクラスメイトたちが目を丸くする。

でも、そんな視線を抜けてあたしは彼の名前を呼んだ。



「香椎くん…っ!」


乱れた呼吸のまま、その背中に呼び掛ける。


視界が滲んでく。

ココロが、愛しさに溢れていて。


振り返らない背中を見つめ、あたしは言った。



「話したいことがあるの…っ、」



そんなあたしに、教室中がざわつき始める。


「ちょっと、何なのよ急に!」

傍に居た吉永さんがあたしに突っ掛かって来た。


でも、あたしは吉永さんに目をくれることもなく続けて香椎くんに問い掛ける。



「お願い、少しでいいから…っ!」






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