クローバー

その日夕飯の時に
「お化け屋敷に誰か越して来たみたい。どうしたらあんな所に住めるのか理解出来ない」と私が冷やし蕎麦を食べながら言うと、

「そんな言い方しないで。隣に人が越してきて母さんは嬉しいの」

「何故そんなに嬉しいの」
と私は食器を洗い始めた母さんに尋ねた。

こっちを見て微笑みながら母さんが言った。

「実はね、お隣に越してきたのはね、母さんの初恋の相手なの」

「へぇーそうなんだ。でもどうしてわかったの？」

「２日前になるかしら、引越し蕎麦を持って挨拶に来たの。」
母さんは食器を洗いながら話つづけた

「まさか、お隣さんになるなんて夢にも思わなかったわ」

私は最後の蕎麦を食べながら、今時引越し蕎麦を持って挨拶に来るとは変わり者だと考えていた。
が、一度この目で見てみたいとも思った。