嘘つき①【-ハジマリ-】
「お疲れ」
不意に聞こえたのは、
「部長!!」
一気に心拍数が上がる。
「まだ帰ってなかったんですか?」
突然登場した彼に目を丸くしたあたし。
「俺のセリフだな」
クッと笑うその仕草が綺麗過ぎて見とれてしまう。
部長とさっき会ってから一時間が経過していて、なのにまだ同じポジションのあたしで、よく考えれば部長は多分、明日の打ち合わせとかしてたんだと思う。
明日から始まる新プロジェクト。あたしも一応そのチームの一員で、部長がリーダー。
ここから、淡い恋が芽生えたらいいのに。
あたしは部長の左手の薬指に胸の奥で舌打ちをした。