嘘つき①【-ハジマリ-】
あたしは奪われた視線をそのままに、
2人っきりのこの状況がそうさせるのか、
「…寂しくないですか?」
口から出たのは聞きたくないプライベートな疑問文。
「ん?」
「綺麗な、リング、」
だって、もう、視線に気づかれたに決まってる。部長の婚約者は今海外に留学中だと、噂好きな誰かが前に言っていた。
「ああ、これか」
部長は特に抑揚もつけない声で淡々と返す。出来れば『恥ずかしいな』とか照れるバージョンは出来れば止めて下さい。