独り言2<その後のある日>
趣味は一応「読書」と言いながら、実際は恋愛小説やエッセーといった軽い物ばかりを選んで、古典文学や歴史小説といった本格的なものは読んだことがなかった。そんな真奈美だが、前から一度いわゆる名作と呼ばれる本を読んでみたいとは思っていた。

そして、これがいいきっかけとなっていつの間にか読書に夢中になり始めていたのである。

だからといって、真奈美の生活は「劇的」に変わってなどいない。

それどころか、つい最近、偶然みたテレビの特集で「年収がわずか200万円程度の人に国民健康保険の保険料として年間50万円近い請求書が送られてくるという自治体もある‥」なんていう事実を知り、ますます落ち込んでいるくらいだ。

今は派遣会社での社会保険も以前より充実してはいるけれど、「派遣はやっぱり派遣」でしかない。いつ、どうなるかわからない。もちろん、今の時代は正社員でもそうかもしれないが、やはり「派遣は派遣‥」不安はつきない。

もし、失業したりすると、自分で全ての事をやらなければならなくなるのである。そんなことになったら、とてもじゃないが生活なんかできないではないか‥!

「じゃあ‥どうすればいいの?」

‥と、どこかに問い合わせようにも『何をどのように聞けばいいのか』、『実際の仕組みがどんな風になっているのか』さえもよく理解できていない自分に気が付いた。

そういえば、まともに今まできちんと「新聞」さえ読んでなかったかもしれない。

そんな自分が余りに情けなくて、でも、そこで泣いていても仕方がない。

以前は一人暮らしだからもったいないと言う理由で決してとることのなかった「新聞」をとりあえず定期購読するようにしてみた。

そして、37歳にして改めて「新聞」という読み物が意外に面白いことを知った真奈美だった。

幸い、新聞は会社でも読むことは可能なので、会社でとっていない新聞を自宅で取るようにしたのだが、それぞれを比較して読むとまた面白いということも知った。

だからといって、大した変化はないのだけれど、それでも真奈美は少しだけど、自分自身が少しは変わったような気持ちになってはいた。
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