騎士戦争


総団長である男に近づこうと馬を操るヒモをたどる。


その手は、震えていた。


決して恐怖からではない。いわゆる、武者震い。


前述のように思っていながらも、彼はどこかワクワクした気分を持っている。


「総団長」


しっかりした態度を見せたいのに、出たのは小さくかすれた音で。


ほのかに恥ずかしさを覚えた。


「……ロッシュか、どうした。 この期に及んでまだ反対か?」


イタズラめいたものを瞳に宿すところ見ると、フェンもまた、楽しそうだった。


ロッシュとはまた少し違う種類の笑みを浮かべている。


「まさか。今は周りのヤツらの心境が心配、ってところかな。 …それよりだ。長期せ──」


周りのヤツら。そう揶揄されたのは彼の部下たち、並びにこの軍全体だ。


「そうだった、そこについては何も伝えていなかったな」
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