姫のさがしもの。


栄太と別れてから、
なんとなく

宮岸さんとも
会い難い気がしてた。



少しだけ、栄太に
償うような気持ちで。



だって、
あんなに栄太を号泣させて

すぐに宮岸さんと
楽しくデートなんて…



罪の意識で
さすがに出来ないな…って

そう思って、
宮岸さんから頻繁にくる
デートの誘いも
断り続けた。




『ごめんね、優希と
先約があるんだ。

また今度、誘ってね


姫夏』




そんなメールを
2週間で6度も
続けて送ったら

宮岸さんだって
異変に気付いちゃうよね?




―月曜、朝一番から
宮岸さんのメールが
届いた。


『姫夏。何かあった?

俺のことが嫌になったんなら
それでもいいから

一度、話がしたい。
今日、夜に会えないかな?


宮岸』





…そんなつもりじゃ
なかったんだけど。



でも、私、
まだ栄太に償いきれてない
気がするの。




3年も付き合った人と
別れを遂げるっていうのは
不思議なもので

もう完全に決意して
愛情もすっきり捨てて
別れに臨んだはずなのに、

やっぱりココロには
ぽっかり穴があいていて、

少しだけ淋しい気持ちが、
時々、すきま風のように
心に細く流れこんでくるんだ。




今、宮岸さんに会ったら、

きっとこの淋しさを
宮岸さんに
埋めてもらいたくなる。



でも、そんなの

都合がよすぎる気がして…。
< 492 / 544 >

この作品をシェア

pagetop